おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2024.05.01column

良かった‼ 依田義賢先生生誕115年記念無声映画上映会『僕らの弟』

26日の旧伴家住宅で開催した第9回無声映画上映会『僕らの弟』は定員いっぱいのお客様でした。

参加者には向日市の西山高校でこの16㎜フィルムを発見された小松 明先生もおられました。

最初に太田から、映画の発見に至る話、映画の背景を取材した話、脚本を書かれた依田先生の話などを話しました。当初は映画を観てから、「じゃ、レコードも発売されていましたから、一緒に聴いてみましょう」と進めるつもりでいましたが、予約者のお一人が電車の都合で少し遅れると分かったので、到着を待ちながらレコードを先に聴いてもらいました。あとから考えると、この順番が映画の理解を深めるのにとても良かったです。

このレコードは、ドイツのボン大学から、同大学所蔵「片岡コレクション」に含まれていたSPレコード『母なき家の母 房一少年』2枚組をお借りしたものです。借用に当たっては音楽評論家の毛利眞人さんの協力を得て、ボン大学の湯川さんにお世話になりました。湯川さんはコロナ前に一度来館いただいたことがありますが、この秋にも再びお会いすることが出来そうで、今からその日が来るのをとても楽しみにしています。

「大井新太郎、伏見正光、其他大勢」の声の出演。画像は(一)~(四)まであり、3月30日『SPレコード博物館』著者保利透さんをお招きしてのレコード再生イベントを思い返すと、本来なら蓄音機の針を4回も替え乍ら手間暇かけて聴くところですが、ボン大学でデジタル化された音源を送って貰って聴くことが出来ました。全く、便利な世の中です。

タイミングよくヤフーオークションで一枚をGETできたので、当日の参加者の皆さんに見せてあげようと用意していたら、ふとしたはずみでカーペットの上に落下。実に簡単に二つに割れてしまい、ショックを受けました。仕方なく額装して会場に持参しましたが、最初に書いた小松先生が、「写真を撮らせてください」と言って下さったので、少しは役に立ったのかも。このレコードが入っている紙製の袋「スリーブ」をとりあげての研究会が6月2日京都市立大学であります。毛利さんや、3月30日のイベントに来て下さった大西秀紀さんも登壇されます。先着50名なので、関心がある方は、お申し込みを早い目にどうぞ。

レコードドラマにみんなで耳を傾けた後で、映画『僕らの弟』を上映。在りし日の井上陽一さんの活弁は情感たっぷりで、さすがの語りでした。

誰からともなく上映後に拍手が起こりました。そして、その後も映画の余韻に浸って、皆さんといろんな話をしました。おかげさまで、とても充実した良い上映会となりました。

今日、小松 明先生から当日の感想を受け取りましたので、以下に掲載します。

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活弁と演奏(収録版)無声映画上映会

シナリオライター依田義賢・生誕115年企画

「僕らの弟」上映会に参加して

人の縁とは、不思議なものである。私が勤務していた高校が、昭和62年(1987)に、創立60周年を迎えた。記念事業の一つとして、設立当時のものが何か残っていないか、校内を探していた。その時、倉庫から見つかったのが、昭和8年(1933)制作の著名な脚本家依田義賢氏の『僕らの弟』という16ミリフィルム映画だった。勤務校は向日市にあるが、私の自宅は、依田氏の自宅とは目と鼻の先にある。また私が卒業した下鴨小学校の校歌は依田氏が作詞されている。昨年150周年を迎えた下鴨小学校が持つ美術品展を京都府立京都学・歴彩館で開催した時に、依田氏の長男である義右氏の協力で、義賢氏の記念品を展示させて頂いた。おもちゃ映画ミュージアムでも、今年義賢氏生誕115年記念展を先日まで開催されていた。僕らの弟という映画が、発見された時、フィルムの両端にある四角い穴の間隔(ピッチ)が、微妙に違うために映写機に架けられないでいた。つまり、内容が分からない状態であった。当時古いフィルムを架けることが出来る映写機を、NHKさんがお持ちだという事で、持ち込んだ。そしてまわりまわって、当時大阪芸術大学で依田氏と関係のあった、現おもちゃ映画ミュージアムの太田米男氏にお世話になることになる。太田氏に巡り合わなければ、『僕らの弟』も陽の目を観なかったであろうし、令和6年4月26日に、カンデオホテルズ京都烏丸六角(京都市登録有形文化財旧伴家住宅)で、フィルム発見の37年後に、並んで『僕らの弟』を鑑賞することもなかったであろう。久しぶりにこの弁士付きの無声映画を鑑賞して、昭和初期当時の日常を目の当たりにして、感動した。映画の中に生き続けている昭和初期の日常が、令和の世の中でも、見ることが出来る。映画は素晴らしい。またその埋もれかけている映画やフィルムなど、発掘し保存されている太田夫妻には、敬服の念を抱くばかりです。同好の士と愉しい夜を過ごすことが出来ました。また新しい人との縁が出来て、これから先々に起こる出来事に期待しております。このような場を設けて頂き、感謝です。小松明

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小松先生、どうもありがとうございました‼ いつか機会があれば、『僕らの弟』と大阪毎日新聞社が作った『非常時涙の少年』の見比べをしたいものです。その時はまたご一緒しましょう。

そして、今日「前回の映画、めちゃめちゃ面白かったです。」と、当日参加して下さった方からメールを頂戴しました。そしてまた今日は、貴重な資料をお貸しくださった皆様のお手元に、無事に資料をお返しすることができ、ホッとしています。来場いただいた皆様にも御礼を申し上げます。3月5日から4月28日まで開催した「シナリオライター依田義賢生誕115年記念展」はこれで終了しました。天国の依田先生、喜んで下さったかしら? そうだと嬉しいのですが。

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